デザインと快適さを支える
木枠に込められた技術

ソファの見えない部分にこそ、長く愛される秘密がある。今回は、ソファの心臓部ともいえる木枠について、職人の知られざる手仕事をご紹介します。

デザインと快適さを支える木枠に込められた技術

    CONTENTS

  1. ソファを支える木枠の大切さ
  2. 安心の座り心地を生む丁寧な工程
  3. デザインと快適さの両立を目指して
  4. 手掛けるたびに進化するソファづくり
ソファを支える木枠の大切さ
Q :

木枠はソファにとってどのような役割があるのでしょうか?

張り職人 Mさん:
ソファの基本構造は木枠を土台として、「バネ・下張り生地・ウレタン・生地」の順に組んでいきます。この構造の中で、木枠は通常見えない部材になるため伝わりづらいんですが、家に例えるなら骨組みや基礎にあたります。家と同じように、ソファも支える土台がしっかりしていないとガタつきやぐらつきが発生し、座り心地に影響が出てしまうとても重要な箇所です。

FLANNEL SOFAでは、小さなお子様から大人の方まで幅広く使用していただくことを想定してソファを製作しています。座ったり寝転んだり、使用する方が行う様々な可能性を考えて、木枠から精確かつ頑丈に組み上げます。強度が必要な部分には材料を惜しまずしっかり使って、長い年月を安心してくつろいでいただけるように心がけています。

ソファの基本構造は、木枠を土台に「バネ・下張り生地・ウレタン・生地」の順。
ソファの基本構造:①生地 ②ウレタン ③下張り生地 ④バネ ⑤木枠
ソファの基本構造は、木枠を土台に「バネ・下張り生地・ウレタン・生地」の順。
ソファの基本構造:
①生地 ②ウレタン ③下張り生地 ④バネ ⑤木枠
Q :

木枠の材料選びでこだわっていることはありますか?

ソファはお客様が長く使うものですから、耐久性を重視して木枠の材料は厳選しています。バネやウレタンをしっかり支えるために、私たちは木枠にカポール材と合板を選びました。カポール材は密度が高く、粘りと強度があり、どの方向からでもビスやタッカーが打ちやすいんです。
合板は天然木より反りが少ないため、さらに強度を持たせたい部分に使用しています。 2種の木材を使い分けることで、安定した耐久性を維持することができます。
※木材の接着には、人と環境に優しいJIS「F★★★★」規格の接着剤を使用。

ビス・タッカーを打ち込む箇所にカポール材、さらに強度が必要な箇所に合板を使用しています。
ビス・タッカーを打ち込む箇所にカポール材、さらに強度が必要な箇所に合板を使用しています。
ビス・タッカーを打ち込む箇所にカポール材、さらに強度が必要な箇所に合板を使用しています。
ビス・タッカーを打ち込む箇所にカポール材、さらに強度が必要な箇所に合板を使用しています。
安心の座り心地を生む丁寧な工程
Q :

木枠を加工する際、気をつけていることを教えてください。

ウレタンやバネを取り付ける前に、木枠を2週間ほど外気にさらして保管します。FLANNELの木枠は天然木を使用しているので、時間が経つと木にひねりが出てくることがあります。ソファの作製途中で木のひねりが出てしまうと調整・修正など大変になり、最悪作り直す必要が出てしまいます。ですから保管の時間をとることで、木の変化に気づきやすくなり必要な調整ができるようになります。

そして、木枠にウレタンや生地を張る前に、カンナや金槌で木枠の角を落として、生地が破れにくいようにしています。職人の怪我予防でもあり、お客様にも安心して使っていただけるよう、安全性を高める大事な工程でもあります。

木枠を加工する
Q :

ソファの座り心地や耐久性を高めるために、木枠にはどのような工夫をしていますか?

座面のバネと木枠の間にウレタンを挟むことで、座った時の衝撃を和らげる緩衝材にしています。バネを木枠に取り付ける際はタッカーで打った後、緩まないようさらにタッカーの針をハンマーで叩いて、しっかり固定します。
ほかにも、負荷がかかる部分にはビスでしっかり補強し、木材が緩んだり外れたりしないように工夫しています。木枠の耐久性をあげるひと手間ふた手間が、ソファの長期保証を可能にする所以でもあります。

打ち込んだタッカーをハンマーで叩いて補強。
打ち込んだタッカーをハンマーで叩いて補強。
デザインと快適さの
両立を目指して
Q :

FLANNEL SOFAはシャープなラインのデザインが多いですよね。ソファのラインをまっすぐ出すためにも、木枠に対して何か工夫があるのでしょうか?

木枠にウレタンを張ると、どうしても角が丸くなりやすいんです。そこで、モールを木枠の端につけることで、木枠に土手を作り少し出っ張らせます(写真1)。すると、角のウレタンが潰れずに、直線的なラインが出ます。このラインが、生地の縫い目とピタッと正確に揃うことでソファのフォルムが綺麗に見えます。
モール部分が直接体に触れると座り心地に違和感が出てしまうので、身体に当たらない部分にだけ使っています。お客様には、見た目の美しさだけでなく、座り心地も満足していただきたいので、モールの施工箇所にも細部までこだわっています。

体が当たらない部分にモールを施し、直線を出しています。
(写真1)身体が当たらない部分にモールを施し、直線を出しています。
まっすぐなラインが際立つSIESTA。
まっすぐなラインが際立つソファSIESTA。
Q :

とくにソファPIVOは、背が一部抜けていてユニークなデザインですが、木枠に配慮していることがあれば教えてください。

PIVOは、あらゆる方向から座ることのできるソファです。
PIVOは、あらゆる方向から座ることのできるソファです。背と肘の間の「抜け」部分は、お客様がどのような動きをしてもいいよう、部材を増やして木枠を強化し、快適な座り心地を維持できるようにしています。
PIVO3人掛け仕様
PIVO3人掛け仕様は、「抜け」部分に部材を増やしています。
PIVO3人掛け仕様
PIVO3人掛け仕様は、「抜け」部分に部材を増やしています。

以前、張り替え修理で戻ってきたPIVOでは、長年使用することで背部分のウレタンが下にズレてしまい、形が少し崩れていたことがありました。そこで、設計を見直し、木枠がウレタンをしっかり下支えする構造にアップデート。その後は、張り替え修理でお預かりしたPIVOに、ウレタンのズレが見られなくなりました。

ウレタンが下にズレないよう、木枠でしっかり下支えする構造にアップデート。
ウレタンが下にズレないよう、木枠でしっかり下支えする構造にアップデート。
ウレタンが下にズレないよう、木枠でしっかり下支えする構造にアップデート。
ウレタンが下にズレないよう、木枠でしっかり下支えする構造にアップデート。
手掛けるたびに進化する
ソファづくり
Q :

お客様の声などを反映して、木枠でアップデートした部分があれば教えてください。

お客様の声は本当に大切です。以前「音鳴り」が気になるという声があったため、職人同士で意見を交わして検討・検証した結果、木枠とバネの固定部分に丈夫なテープを貼ることで、音鳴りを防ぐようにしました。バネが木枠と接触する部分には、本革の端材を使って緩衝材にしています。これで音鳴りの解消だけでなく木枠の耐久性も上がり、お客様により長く快適にソファを使っていただけるようになりました。

丈夫なテープを貼って、バネと木枠の接触による音鳴りを防ぐ。
丈夫なテープを貼って、バネと木枠の接触による音鳴りを防ぐ。
Q :

木枠の工程において、特に心がけていることはありますか?

より良くお客様に使っていただくために、すべてのソファにおいて改良検討して、部材も手間もかけています。効率や生産コストを考えれば、木枠に対して、テープや本革での音鳴り防止・木材を増やす補強、木枠を寝かせる工程などを省いて仕上げる選択肢もあります。しかし私たちは、お客様の目に長く触れ、座って、愛用していただけるより良いソファを届けたい。そのためには手間も材料も惜しまず、デザインと座り心地と耐久性、すべてバランスよく追求していくことが大事だと思っています。

職人の技術が詰まった、まっすぐなラインでフラットなデザインのBRICK。
職人の技術が詰まった、まっすぐなラインでフラットなデザインのBRICK。

ソファは日々の暮らしの中で、使うほどに思い出が増えていくものです。
木枠はソファの土台として、デザインと快適さ・耐久性を支える重要なパーツ。お客様にとって特別な一台になるように、職人一人ひとりが細部までこだわり、必要な部分に最適な材料を選ぶ。そうして、安心して長く使えるソファを一つひとつ丁寧に作り上げています。
製品として世に送り出された後もさらにアップデートする箇所はないか、FLANNEL SOFAの職人たちは日々ソファと向かい合っています。

一瞬の感動をずっと続く感動にするために、見えない部分まで職人がこだわり抜いたソファを、ぜひショールームでお確かめください。

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