no.61 ヒトに伝えること
この3年間、産学共同プロジェクトのデザイナーとしてFLANNEL SOFAさんとタイプ・エービーさんの3者で試行錯誤してきた過程を振り返り、学生の自己中心的発想のデザインから、プロフェッショナルのデザインに近づけたのではないかと自負しています。また、デザインの着眼点として「モノ」より「ヒト」を重視するようになり、作り手や使い手の気持ちを考えて、デザインすることが大切であると感じるようになりました。
第1弾「RONDO/ロンド」では幾何学を用いた実験的な「モノ」としての面白さを追求したソファでした。ソファとしての使い方や、座り心地等「ヒト」に対する検討は二の次としてデザインしていた時期です。
そのなかでもFLANNEL SOFAの職人である和田さんは第一に座る「ヒト」のことを考え、安全、心地よさを追求していたことが思い出されます。
デザインの純粋さ求める僕と安全性を求める和田さんの格闘がありました。少々、問題があっても、職人を説得しきる能力が問われた時期でした。
この時期、タイプ・エービーのスタッフ高橋さんには「ヒト」がどういう場面でどのように使い、売り文句を打ち出すのか検討するように指導されました。それは、「RONDO/ロンド」の尖ったデザインコンセプトを職人に伝え、消費者の購買意欲を促す、デザイナーとして欠かせない伝達能力を養うプロセスでした。
結果的に、「RONDO/ロンド」は販売に至らず、「ヒト」を考えないデザインコンセプトを伝えることの難しさを実感しました。
第2弾「PIVO/ピヴォ」では「RONDO/ロンド」での反省を踏まえて「ヒト」の使い方を考え、リビングとダイニングを繋ぐようなソファを目指し商品開発をスタートしました。
※リビングとダイニングに置かれた「PIVO/ピヴォ」
「PIVO/ピヴォ」の開発過程でもFLANNEL SOFAとタイプ・エービーの姿勢は変わりません。ソファの安全性や心地よさを追求するFLANNEL SOFAの職人和田さんとソファを使う場面や売り文句を検討し、デザインコンセプトを分かり易く伝えることを徹底しようとするタイプ・エービーのスタッフ高橋さんがいました。「ヒト」のためのデザインになったとたんに形状や内部構造の考え方が明確になり、商品としての売り文句の検討も進め易く、スムーズな商品開発となりました。
結果的にも「PIVO/ピヴォ」は、販売にこぎ着けることができました。
この3年間の「RONDO/ロンド」と「PIVO/ピヴォ」のデザインを通して、
商品開発を成功させるためには「ヒト」を第一に考え、
商品を制作する職人と消費者へデザインコンセプトを分かり易く伝えることことが重要であると学ぶことができました。
今後、社会に出てデザイナーとして商品開発をする時には、このプロジェクトで学んだ「ヒトに伝えること」を心がけ、次なる商品開発の成功へ繋げて行きたいと思います。
最後になりましたが、このようなすばらしい機会を与えて頂いたFLANNEL SOFAさんとタイプ・エービーさん、そして僕のデザイン活動を運営という形で支えてくれた坂井大介くんに感謝したいと思います。
3年間の長きに渡り、未熟なデザイナー富田をご指導頂き、ありがとうございました。
「PIVO/ピヴォ」の商品ページ
http://www.flannelsofa.com/shop/pivo.php
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名古屋工業大学/伊藤研究室 富田 有一
http://www.type-ab.com/ti_di/index.html
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no.60 モノづくりにおける3つのコミュニケーション
3年間継続した本プロジェクトもとうとう終焉を迎えることとなりました。
私は、伊藤研究室のプロジェクト担当者として関わらせて頂き、本当に多くのことを学ばせて頂きました。今回はその学んだことをブログにまとめ、本プロジェクトを振り返り、新しいステップに踏み出すきっかけとしたいと思います。
私は、本プロジェクトから3つのコミュニケーションを学びました。
まず1つ目は、「人とモノとのコミュニケーション」。
これは、コンペ過程、デザイン検討段階でで経験させて頂いたスケッチや模型と対話しながらイメージしたソファの具体化する行為です。コンペ過程では自分がイメージしたソファを具体化するためスケッチなどを用いました。デザイン検討段階では、デザイナーとしてプレゼンを勝ち抜いた名工大の富田さんがイメージしたソファを3者の意見を踏まえ、ブラッシュアップさせるために数多くのスタディ模型を製作しました。
※コンペ過程(2008年3月-4月)
2つ目は、「モノとモノとのコミュニケーション」。
これは、製作検討段階で経験させて頂いた部材と部材の納まり(ディテール)や空間とソファの関係といったことです。商品を構成する木枠やスプリング、ウレタンやファブリックといったモノがうまくコミュニケーションを取り合い共存しなければ、いい商品はできないということを強く心に刻みました。
※デザイン検討段階(2009年4月-10月)
※製作検討段階@FLANNEL SOFA自社工場
3つ目は、「人と人とのコミュニケーション」。
これは、商品を考え、製作し、完成させるまでのデザイナー、メーカー、売り手、消費者の関係を構築することです。
本プロジェクトでは、商品を製作する上で必要なデザイナーとメーカーとのコミュニケーション、商品を売るために必要な売り手と消費者とのコミュニケーションを多くの場面から経験することができました。例えば、デザイン検討段階で行った「公開ミーティング」、2年継続して行った「NAGOYA DESIGN WEEK展示」といった場面です。
※公開ミーティング(2009年6月)
※NAGOYA DESIGN WEEK2009展示会
こうして振り返ると、本プロジェクトの中でたくさんの方々やモノとのコミュニケーションを通し、多くの経験をさせて頂いたことを改めて実感します。
これからも、この3つのコミュニケーションを大切にし、精進していきたいと思います。
本当にありがとうございました!!
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名古屋工業大学/伊藤研究室 坂井大介
http://www.type-ab.com/ti_di/index.html
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no.59 開発1年、商品化から1年半
「PIVO/ピヴォ」が商品化され、発表からはや1年半。
売れ行きは全く止まらず、もはや「PIVO/ピヴォ」はFLANNEL SOFAの主力商品となる勢いです。
確かに、一見して分かる、そのコンセプトと、家族、子供、団欒、導線を意識したこのソファは、確かな安全性と、生活における利便性をさらなる武器に、皆様に訴えかけ、結果売れているのでしょう。
この「PIVO/ピヴォ」といえば、試作段階では構造設計とクオリティー、コンセプト表現がマッチせず苦労しましたが、その割には意外と早く商品クオリティーまで持っていけた記憶があります。
それは、関係スタッフ総出で真剣に取り組んだからでしょう。
わたしたちは、産学共同プロジェクトという、初の商品開発の手法を試みたのですが、これは学生さんのフレッシュなアイデア、タイプABさんのデザインコンセプトの分析と再構築による、コンセプトの視覚表現方法、そして私たちFLANNEL SOFAの具現力がまさに掛け合わさったカケアワセプロジェクト。
私たちとしても自信作の「PIVO/ピヴォ」。
必ずと言っていいほどショールームにあります。ぜひお子様連れで、ご夫妻で、ご家族そろって「PIVO/ピヴォ」を体感頂けたらな、と思います。
今、「PIVO/ピヴォ」が熱いですよ!!
※実際にご購入されたお客様のお部屋写真です。
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FLANNEL SOFA/和田 崇
http://www.flannelsofa.com
http://www.flannelsofa.com/shop/
ハギレプロジェクト
http://www.flannelsofa.com/hagire/
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no.58 このプロジェクトで得られたこと
早いもので3年が立ちました。
ゼロから始まったこのプロジェクトも、
3年の間に「RONDO/ロンド」と「PIVO/ピヴォ」の2つのソファが生み出されました。
2つのソファの完成までには、多くの人が関わり、何度も議論を重ねてつくられてきたことは、今までのブログを見ていただいてもわかると思います。
今回は、今までを振り返りながら、このプロジェクトで得られたことを皆様にお伝えしたいと思います。
FLANNEL SOFA さんには、常にものづくりへの真剣な想いを見せていただきました。
特に「RONDO/ロンド」を検討している時に、特殊な形状のソファ案に対して、時に厳しいご意見をいただくこともありました。それは全て使われる方の安全面を最優先に考えてのことです。FLANNEL SOFA さんから出てきた制作提案に対して、こちらもデザイン上ゆずれないこだわりをぶつけ、また図面化する。そんなやり取りを何度も繰り返した結果、「RONDO/ロンド」は生まれました。
デザイナーの多くは、コンセプトに重きを置いて「新しいもの」を作り出したいという気持ちが前に出てしまいがちですが、このプロジェクトを通して、改めて「売れるもの」をつくることの大切さを感じることができました。
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TYPE A/B
http://www.type-ab.com/
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